2023/11/11 10:38

大豆と甲状腺は、深い関係があります。しかし、大豆製品を食べて甲状腺機能が低下することの証明はされいません。
イソフラボン類(大豆の有効成分でゲニステインやダイゼインなどがある)が甲状腺ホルモンの合成を抑えるという動物実験は複数存在します。あくまで、動物実験です。実際、人間、特に日本人で起こるのを証明できた報告はまだありません。動物実験は、通常ではありえない大量のイソフラボン類を強制的に投与し(そもそも動物実験とは、そう言うものです)、血中濃度を異常な高値(薬理学的濃度と言います)にします。それに対して、生物(動物も人間も)の通常血中濃度を生理的濃度と呼び、この濃度では何も起こらないのです(一般的に薬理学的濃度は生理的濃度の数百-数万倍です、正に「薬も毒になる」)。
以上より、日常生活で食べる量のイソフラボン類で甲状腺機能低下症が起こるとは、到底、考えられません。(正式な甲状腺学会・論文報告はまだありませんが、)動物実験で使用するのと同じ大量のイソフラボン類を人間が摂取を続ければ(例えば乾燥大豆の大量摂取を続ける、イソフラボン類の健康食品・サプリの大量摂取を続けるなど)、日本人でも起こる可能性はあります(しかし、極めて稀なケースでしょう)。
豆乳・豆腐・納豆・大豆製品は、最も強力に甲状腺ホルモン剤、チラーヂンSの腸からの吸収を妨げます(最大40%)。甲状腺機能低下症で、チラーヂンSを飲んでいる人が、大豆製品を食べ出せば(特に、大豆製品を食べた直後にチラーヂンSを飲めば)、血液中の甲状腺ホルモン濃度が下がり、まるで、「大豆製品が直接、甲状腺を障害し、甲状腺ホルモンが低下した」様な錯覚を起こさせます。
これが、伝言ゲームの様に、人から人へと伝わるうちに、「大豆製品が甲状腺に悪い」となったのでしょう。
しながら、「大豆製品が甲状腺に悪い」真実が1つだけあります。それは、大豆アレルギーのある甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人です。アレルギーは甲状腺機能亢進症/バセドウ病の増悪・再発の3大原因の1つです(ちなみに他の2つは喫煙、ストレス)。大豆アレルギーがあるのに、大豆製品を好んで食べる甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人は、抗甲状腺薬(メルカゾール、プロパジール、チウラジール)の効きが悪く、再発を繰り返します。
大豆アレルギーは、大豆製品を食べて発症し、含まれるGly m 4と言うタンパク質が原因と言われます。Gly m 4は加熱や発酵すると活性を失うため、味噌や納豆などではアレルギー反応がほとんど起こりません。一方、豆乳や湯葉では強いアレルギー症状が起こります。医療機関で、大豆アレルギーの血液検査(大豆IgE RAST)は、偽陰性が多くあてにはなりません。Gly m 4 (大豆由来)(FEIA法)の方が良い。
以上から、
- 大豆アレルギーのある甲状腺機能亢進症/バセドウ病の人
- 甲状腺ホルモン剤、チラーヂンSを飲んでいる甲状腺機能低下症の人を除けば、「大豆製品が甲状腺に悪い」は、日常的には無いのです。
今日は「大豆で甲状腺機能低下症になるのか(大豆と甲状腺)」の話でした。